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コラム(教えてシリーズ)②


教えて、西窪さん!

「射撃競技で勝つために、分解力8.7%改善のための努力~

March-X ハイマスター 10x-60x56mmライフルスコープ開発秘話」


 
レンズのスペシャリスト 西窪泰利
 
新人営業マン  森田真理
 マーチスコープを製造しているDEON光学技研の創業者の一人、かつ取締役。
レンズ設計とライフルスコープの最終検査を行う。幼い頃に望遠鏡に魅入られ、そのまま光学機器の世界に進む。
世界のトップスコープメーカーのためにスコープを設計・製造するOEM企業で約30年の勤務経験有。
レンズ設計に情熱を燃やし、数々の世界初のレンズ設計開発を成功させている、レンズのスペシャリスト。

 以前の勤務先はリクルート。子育てのために9年間のブランクを経て去年DEONに再就職。
エアーライフル、スモールボアライフル、ビッグボアライフルを撃ち、ハンドローディングは始めたばかり。
19年8月はオーストラリアで遠距離射撃大会にデビュー予定。
スコープの勉強ができて、英語が生かせる職場に大満足。
趣味は旅行、食べ歩きと海外ドラマを見ること。
 
 『射撃競技というレースで勝つために、例え分解力が1%UPでも見え具合改善にこだわりたい』そのような想いで日々レンズの開発を続けています。Marchスコープは射撃競技に鍛え上げられ、常に進化し続けています。
今回のコラムでは私が詳細についてお答えします。
 今回のコラムでは、射撃競技部門での弊社の売れ筋商品March-X High Master 10x-60x56mmとMarch 10x-60x52mm の違いの紹介を通して、分解力が例え少ししか向上しないにしても、少しでも綺麗に見えるように改善し続ける弊社の努力を感じて頂ければ幸いです。



マーチスコープ ハイマスター10x-60x56mmの開発目的


March-X High Master 10x-60x56mmは、March 10x-60x52mmの改良モデルとして2017年に開発されました。
実際どれくらい見えるようになったのか皆さん気になるかと思いますが、どれだけ小さなものまで見ることが出来るかの指標に「分解力」があります。分解力の数値が小さければ小さいほど細かいものまで見ることができます。

理論的にはスコープの分解力は、対物レンズの大きさによって決まります。つまり、対物レンズの直径が大きければ大きいほど、分解力の値が小さくなり、より細かいものを見ることができるということです。

2019年4月に地球上の8つの電波望遠鏡を結合させた国際協力プロジェクトで、巨大ブラックホールとその影の存在を初めて画像で証明することに成功をしました。世界中の電波望遠鏡を同期させて、地球の自転を利用することで、圧倒的な感度と解像度を持つ地球サイズの仮想望遠鏡を作り上げました。つまり、対物レンズが(仮想上)地球サイズのとてつもなく大きいものであったため、分解力の値が非常に小さくなり、20マイクロ秒角という、人間の視力300万に相当する、極めて高い分解力を実現することができたのです。結果、これまで撮影が不可能と考えられていたブラックホールの撮影に成功しました。
参考文献/写真引用元:https://www.nao.ac.jp/news/science/2019/20190410-eht.html


レンズの分解力は一般にドーズの実験指式「分解力=115.8秒 / 対物レンズの有効径」で決まります。
先ほど地球サイズのレンズの分解力が20マイクロ秒角と申し上げましたが、角度については下記の通りに計算します。

角度の単位  1回転 = 360度
1分角 = 60分の1度
1秒角 = 60分の1分角 = 3600分の1度
(1ミリ秒角=1000分の1秒角) 
(1μ秒角=100万分の1秒角)
視力1 とは、1分角が認識できる能力のことです。
   (3m先にある大きさ1mmのものに相当。)


つまり、先ほど申し上げた地球サイズのレンズの分解力は20マイクロ秒角=2000万分の1秒角であり、人間の視力に換算すると、9000km先の1mmの大きさを認識できる値ということになります。

さて、今回テーマになっている2本のマーチスコープを、ドーズの実験指式に当てはめてみると、
March 10x-60x52mm      52mmの対物レンズの分解力は、2.227秒。
High Master 10x-60x56mm   56mmの対物レンズの分解力は、2.068秒。
簡単な算数ですが、対物レンズ52mmの分解力2.227秒を100としたとき、
対物レンズ56mmの分解力2.068秒は107.7となり、7.7パーセントの分解力が向上したことになります。

射手達が射撃競技で勝てるように、1点でも得点向上につながるように、私達が対物レンズの大きさを52mmから56mmに変えてHigh Master 10x-60x56mを開発した最大の理由が、この「分解力7.7%の向上」です。 

但し、計算上の理論値はあくまでも理論値であって実際にはその価100%を出すことは大変難しいことです。
レンズの金物も加工する上で公差があります。すべて計算値どおりの寸法で作っても温度によって膨張・収縮があり、何枚かのレンズを組み合わせた時にすべてのレンズの芯が一致するということは難しいことです。

天体望遠鏡など特殊なものは、それをできるだけ計算値に近くなるように1基ずつ大金をかけて作ります。
また、ライフルスコープは強い衝撃に耐えるために、レンズを強く締め付けます。
この為にわずかながらレンズが歪みます。
また多くのレンズを使用する為、基本的な設計と部品の精度、組立技術のすべて総合して品質を作りこみます。
このような色々な条件の中で実測している数値が下記性能表に書かれた数字であることをご理解頂ければ幸いです。
ちなみに計算上の数値では無く、性能表の実測値を比較すると、52mmの対物レンズの分解力2.5秒を100とした時、56mmの対物レンズの分解力2.3秒は108.7となり8.7%分解力が向上しました。

March 10x-60x52mm





March-X High Master 10x-60x56mm


 

10x-60x52mmと進化版High Master 10x-60x56mmの性能差について


     10x-60x52mm  High Master
10x-60x56mm
 ①対物レンズ有効径 (mm)  52  56
 ②ボディーチューブ径 (mm)  30 34 
 ③全長 (mm)  420 413 
 ④重量 (g)  730 930 
 ⑤レンズの種類  EDレンズ スーパーEDレンズ 
 ⑥EDレンズの枚数 (枚)  1
 ⑦分解力(実測値)  2.5 2.3(8.7%UP) 



10x-60x52mmから High Master 10x-60x56mmへの変更箇所

①対物レンズ有効径 
対物レンズ(物の方向を向いているレンズ)の有効系径は52mmから56mmになりますので、光を取り込む量が増えて、より解像力も高めることができます。

②ボディーチューブ径
ボディーチューブとは、上記イメージ画像の「March」マークのあるダイヤル部分が設置されているスコープの最も細い部分を指します。ここを30mmから34mmと、4mm太くしたことで強度が増したと共に、スコープ内に空間ができますので組み込むレンズをより工夫することが出来ます。
マウントリングは34mm用をご使用ください。

③全長 
新しいレンズの開発により、全長は実は7mm短くなりました。

④重量
ボディーチューブが太くなり、レンズの枚数も増えて総重量は200g増えました。
競技で重量検査がシビアな場合は、200gの増量は好ましくないかもしれません。

⑤レンズの種類
EDレンズは特殊低分散レンズ、異常分散レンズ(Extraordinary low Dispersion lens)レンズと呼ばれ、色の分散の変化が通常の光学ガラスに比べて大変少ない素材を使用しており、適切に使用すると非常に色収差の少ない像を得ることができ、特に高倍率で効果を発揮します。
スーパーEDレンズとは、EDレンズの特性を更に向上させ、異常分散の特性を持つ蛍石により近い光学特性を有したレンズです。色収差を更に抑えて、シャープでコントラストがよりはっきりした像を実現します。              
参考文献:https://olympus-imaging.jp/product/dslr/lens/edlens.html
     http://nvj.nikon.com/guide/fieldscopes/choosing/choosing_03.htm


⑥EDレンズの枚数
52mmではEDレンズが1枚、56mmではスーパーEDレンズが2枚入っています。
蛍石により近い光学特性を有したスーパーEDレンズがハイマスター10x-60x56mmには2枚も入っているので、かなりお得です(笑)

~価格~
価格は各々レティクルの種類とイルミネーションの有無等によって変わります。
もしも日中の競技でスコープを使用するならばイルミネーション不要の可能性も高いでしょうから、今回、同じレティクル(MTR-1・2・3・4・FT)・ゼロセット機能有・イルミネーション無しの同条件で比較してみましょう。
そうしますと、10x-60x52mm は277,600円(2019年5月度時点の税込価格)、
High Master 10x-60x56mmは291,600円(2019年5月度時点の税込価格)と、14,000円アップになります。
対物レンズ56mmの大きさとスーパーEDレン2枚の採用を考えると、使用目的によってはこれは破格の値段と言えるかもしれませんですし、参加競技によってはここまでの性能アップは要らないかもしれません。
他のレティクルやイルミネーション有等の仕様については弊社のホームページをご覧頂ければ幸いです。
http://www.deon.co.jp/Scopes.html

10x-60x52mmを以前使用していたお客様の内、 High Master 10x-60x56mmに変わり、もう10x-60x 52mmには戻れないと仰る方もいらっしゃいます。遠くの距離でもスーパーEDレンズの効果で色収差が抑えられている為、よりはっきりと陽炎までもが見えるようになり、視界がくっきりしたということです。

精魂込めて開発しましたので、是非お手にとってクリアな視界をご覧頂ければ幸いです。