技術情報

ライフルスコープの基礎的光学系

 対物レンズより入った光線は、まず第一焦点面に倒立像を結びます。この面にレチクルを置くスコープを、第一焦点面レチクルスコープと呼びます。更に正立レンズを通り正立像を結ぶのが、第二焦点面です。この面にレチクルを置くスコープを、第二焦点面レチクルスコープと呼びます。射手がスコープを使用する時、接眼レンズを通してみる標的は第二焦点面の正立像を見ています。第二焦点面は接眼レンズを移動することにより、射手の視力に合わせた明視距離に設定されなければなりません。特に第一焦点面レチクルの場合は、低倍率側で接眼視度調整を行わないと合わせることは困難です。
第一焦点面(FFP)スコープと第二焦点面(SFP)スコープの利点と欠点

<center>第一焦点面(FFP)レチクルの利点と欠点</center>
 ボックスのコンテンツ対物レンズにより結像した面にレチクルがある為、ズーム時の芯のズレの影響を受けません (ズームしてもレチクルと像が一緒に動く為)。また、目盛の付いたレチクルの場合、ズームしても像と一緒にレチクルが拡大縮小される為、目盛の数値は倍率に関係なく使用できます。反面、レチクルが拡大される為、レチクルの線、文字、ドット等の太さも太くなってしまいます。3倍比のスコープであれば3倍の太さに、8倍比のスコープであれば低倍時の8倍の太さになります。使用目的とスコープの特性を理解した上で選択する必要があります。
<center>第二焦点(SFP)面レチクルの利点と欠点</center>
 多くのライフルスコープが採用している方式です。第二焦点面にレチクルがある為、ズームしてもレチクルの大きさは変わりません。特に高倍率比のスコープの場合いずれの倍率でもレチクルの太さ・見え方が変わらない為、精密射撃に向いています。欠点としては、ズームした時に、ズーム時の芯のズレの影響を受けることになります。また、目盛の付いたレチクルの場合、目盛りは一定で像の大きさのみ変化する為、目盛の値は指定された倍率においてのみ有効となります。

接眼位置の調整


 第二焦点面と接眼焦点位置が一致しないとパララックスが発生します。右図Aの場合は接眼位置が奥に入りすぎ、Cは接眼位置が手前すぎます。Bのように正確に第二焦点面に接眼位置を合わせることが必要です。この接眼位置は、使用者の視力で変化しますが、眼鏡で強制した視力の場合は標準の位置で焦点が合うはずです。


—正確に接眼位置を合わせるには—
 ズームリングを低倍にして、明るい白い紙をスコープを通して覗いてください。模様があると正確に調整できません。レチクルだけが見える状態で覗いてください。自然に遠くを見る状態でレチクルが一番はっきり見える状態に接眼を回転して合わせます。視力の状態が変わらない限り、接眼を動かす必要はありません。Marchスコープは工場出荷時に標準の位置に白いラインを入れてあります。

焦点調整装置
 対物レンズをフォーカスできる機構を有しないスコープの場合、通常、照準距離の調整は100ヤードの距離に合せて固定されます。(ショットガンスコープでは50ヤード)この位置がずれる事により、100ヤード位置の像がレチクルの位置に焦点を結ばなくなり、パララックス(焦点鏡視差)が発生します。パララックスがあると、眼の位置を左右にずらした時にレチクルに対して像が振れる現象が起きます。 一般的に低倍率のスコープは焦点深度が深いので、上記のような距離に焦点が合うように対物レンズを固定しますが、ほぼ10倍以上の高倍率のスコープについては焦点調整機構を採用することが多くなります。焦点調整装置としては対物レンズを直接動かす対物調整方式と、内部のフォーカスレンズを動かすフォーカス方式(サイドフォーカス方式)があります。焦点調整装置には距離目盛を表示してあるものもありますが、使用者の視力、使用時の気温などにより焦点位置が変化します。距離目盛は目安としてご使用ください。
レティクルが動いて見える問題
 レティクルと標的像が一致するのは、一つの距離だけです。その一点より前でも後でも標的の像を結ぶ位置はレティクルからズレます。

レティクルと像が一致


レティクルの手前に標的像

レティクルの後に標的像

レティクルの位置と標的像が一致せずにずれている時。
光軸中心から覗かない限りレチクルと標的像にずれが発生します。(中心から全くのズレなく覗くことは不可能です)

倍率の低い時や、焦点深度の深いスコープの場合は、目で見て焦点があっているように見えても、焦点がずれていることがあります。
目の位置を少しずらしながら(首を振る)焦点調整(フォーカスダイヤルを動かす)を行いレティクルと標的像がズレない事を確認してください。
この焦点位置がレティクルと標的像が一致した位置です。光軸中心からずらして見ても、レティクルと標的像はズレる事はありません。従ってレチクルが動いて見える事はありません。

パララックス(焦点鏡視差)
 標的像がレチクル位置に焦点を結ばれていないときにはパララックスが発生していると言います。前述のように目の位置を左右にずらすとレチクルと像がずれて見えます。接眼を動かして標的の焦点合わせを行うと、レチクルの位置から焦点位置がずれる為にパラックスが発生します。一度自分の視力に合わせた接眼は動かさないというのが原則です。
接眼調整とフォーカス調整がうまくできない場合
 接眼視度調整やフォーカスダイヤルによる焦点調整がうまくできず、像がボケてしまったり、撃つたびに弾着点が狂うなどの問題が起きます。これらの状況について原因を説明します。

<<接眼視度調整>>
一般的なライフルスコープのレンズ配置


ライフルスコープの視度調整は、接眼レンズを前後して第2焦点面のレティクルに焦点を合わせます。
接眼レンズはルーペとして第2焦点面の像を拡大します。外の景色とは関係なくレティクルだけに焦点を合わせてください。


レティクルをルーペで見たイメージ


正確に視度調整する為には、ズームリングを低倍側に一杯に回し、スコープの対物側20〜30cmくらいの位置に白い紙を置き、何も景色が見えない状態で接眼よりレティクルを覗いてください。この時に目は遠くを自然に眺めるような状態で、接眼レンズを回し最もレティクルがはっきり見える状態で、ロックリングを回してロックをします。
これで、使用者の視力に合った視度調整ができましたので、視力に変化があった時や使用者が変わった時以外は再調整することは不要です。
FFP(第一焦点面レティクル)スコープの場合、第2焦点面にレティクルはありませんが、第2焦点面に像を結ぶので、同様に低倍率にして視度調整してください。

* ズームリングを低倍率にして視度調整をする理由:
高倍率時よりも低倍率時の方がひとみ径が大きくなり、接眼側に出てくる光量が多くなり明るくなります。人の目は明るい時の方がはっきりピントを合わせることが出来ます。
視度調整が不正確の場合、標的像の焦点とレティクルがずれる為、目の位置がずれると像が動いて見えます(パララックスが発生する)。

<<焦点調整>>


標的に対しての焦点調整は、サイドフォーカスダイヤルを回すことにより、フォーカスレンズを前後して焦点合わせをします。フォーカスレンズを前後に動かすことにより、第一焦点面、第2焦点面に結像する標的像は前後に移動します。レティクル像と標的像を合わせることで焦点調整ができます。この時は必ずズームリングを高倍率に設定してください。
低倍率で焦点調整をすると、倍率を高倍率にズームした時に焦点がずれる事により像がボケてしまうことがあります。

* ズームリングを高倍率で焦点調整する理由:
カメラと同様に倍率が低い時には焦点深度が深くなり、標的の手前から標的の後方迄幅広く焦点が合って見えます。逆に高倍率の時には高倍率のカメラのように一点に焦点が合い前後はボケて見えます。高倍率の時には焦点の合った位置がわかりやすく、低倍率の時には焦点の合った位置は曖昧になります。この為低倍率で焦点合わせしても合わせが曖昧であり、高倍率にした時に焦点がずれてしまいます。

スコープのピントを合わせるためのマニュアル
 射撃をしていると、ほとんどの人が「スコープのピント合わせがちゃんとできているか?」と思うことがあるかと思います。ご存知の方もいらっしゃるかもしれませんが、実は4つのステップをチェックする必要があります。下記のマニュアルを参考にして、更にシャープな像で射撃を楽しんでください。

(1)接眼レンズを適切な視度に調整する
接眼レンズを調整するのは、人によって異なる視度を適切に設定することで、「レティクル」をくっきりと見やすくするためです。接眼レンズの調整は、ライフルに装着する前でも後でも可能ですが、近くの壁や白紙を見やすくするために、装着前に行うことをお勧めします。

  1. 接眼部本体を反時計回りに回転させ、自由に動くようにします。
  2. サイドフォーカスを無限遠に設定してください。
  3. 最も低い倍率に設定してください。スコープの倍率が低いほど、レティクルの表面に入ってくる光が多くなります。人間の目は、明るい方がより鮮明に焦点を合わせることができます。
  4. 特徴のない白い壁や白紙などを、できれば約10~20cm離れたところで見てください。
  5. 視度の設定は-2~+2まで調整できます。近視の方は、接眼レンズ本体を-方向に反時計回りに回転させてください。遠視の方は、接眼レンズ本体を+方向に時計回りに回してください。度付きのメガネをお持ちの方で、射撃時にメガネをかける場合は、メガネをかけたまま調整することをおすすめします。
  6. 調整中にレティクルを数秒以上見つめないでください。レティクルが最も鮮明に見えるようになるまで、何度も素早く調整してください。
  7. レティクルの焦点が合ったら、ロッキングリングを反時計回りに回転させ、接眼部本体に突き当たるまで回してロックします。接眼部を最適な位置に設定した後は、視力が変わらない限り設定を変更しないでください。


(2)リングの取り付け位置
リングがスコープのカーブに近いと、内部のパーツの動きが制限されてしまいます。リングは赤い部分に取り付けてください。

(3)リングのトルク値
リングを締めすぎると、スコープの内側の可動部がスムーズに動かなくなる場合があります。内側の動きが悪くなると、ピントを正しく合わせることができません。そのため、必ず推奨トルク値を守ってください。(マーチスコープUK製のマーチリングのバージョンによって値が異なります。リングに変更があった場合は、ホームページ上で推奨値を更新いたします。) 

Marchスコープリング締め付けトルク説明書

(4)サイドフォーカスの調整
サイドフォーカスを調整する目的は、”標的 “をはっきりと見るためです。(1)で説明したように、レティクルをはっきりと見るためには視度調整が必要です。

  1. 一番高い倍率に設定してください。(※下記注2)
  2. サイドフォーカスを目標物がよく見える位置に調整してください。
  3. 正しく調整できたと思ったら、スコープを覗いて頭を動かしてみてください。目の位置によって標的の像とレティクルが一致しない場合、標的とレティクルがずれていることになります。このように、レティクルの位置に目標像が合わないことをパララックスといいます。パララックスがある場合は、サイドフォーカスを再調整し、それでもうまくいかない場合は、視度を再調整してからサイドフォーカスを調整し直してください。

(注1)サイドフォーカスの印は、回転方向を示しています。人によって視度が異なるため、サイドフォーカスは射手ごとに異なる位置に設定されます。そのため、サイドフォーカスには数字がありません。低倍率のスコープでは、10ヤード以下の近距離にピントを合わせることができるものもあります。


(注2)焦点深度とは、像面を移動させてもシャープさを保てる範囲のことです。一般的には、対物レンズの直径が小さく、使用する倍率が低いほど焦点深度は大きくなります。低倍率になると焦点深度が深くなり、標的の手前から向こうまでの広い範囲でピントが合うようになります。そのため、高倍率でズームアップすると、焦点がずれて像がぼやけてしまうことがあります。一方、最高倍率では焦点深度が浅くなり、狭い範囲にでントが合うようになります。倍率を下げても焦点がずれることはなく、画像がぼやけることもありません。

これで準備は万端です。ぜひ射撃を楽しんでください(^^)

ウィンデージ/エレベーション調整について
Windage(左右方向の調整)及びElevation(上下の調整)について


左のイメージのように、狙った標的の左下側に弾が当たった時、W/E調整装置を使用して調整します。
狙いより左側に弾痕がある時には、弾着位置を右に動かすために Windageダイヤルを右(R) 方向に回します。
狙いより下側に弾痕がある時には、弾着位置を上に動かすために Elevationダイヤルを上(UP)方向に回します。
ダイヤルを回す移動量については、スコープの仕様書に従ってください。

MOAとMIL
レチクルの寸法、及びW/E調整装置の移動量は、MOAタイプとMILタイプがあります。

MOAタイプ:MOA(Minute of Angle)とは、角度1分(1/60度)の事であり、100ヤードの距離に於いて1.047インチの幅に相当します。

MILタイプ:MIL(Milli radian)、mrad。1rad=360/2π 1mradは1/1000rad。1000mの距離に於いて1mの幅です。これは0.0573度に該当し、円周の1/6283に該当します。

スコープの明るさ
 ライフルスコープを選ぶ時に迷うことの一つに、スコープの明るさがあります。異なる2機種のどちらが明るいですか、という質問が多くあります。スコープの明るさを比較するには、同じ倍率で比較する必要があります。ここではスコープの明るさと選び方について説明したいと思います。

ひとみ径:スコープの性能表示の中に『ひとみ径』という項目があります。
固定倍率の場合は下記の式で表すことができます。
 ひとみ径=対物レンズ有効径÷倍率
ズームスコープの場合、最高倍率に於いてはこの計算式が成り立ちますが、低倍率時には物理的に光路が絞られ計算式より小さな値を示します。一般的には同じ倍率であれば、対物レンズの有効径が大きいほどひとみ径は大きくなります。それでは、ひとみ径が大きければ大きいほど明るく見えるのでしょうか?人の瞳は、暗闇では瞳孔が7mmになります。従って7mm以上のひとみ径があっても目に入る光の量は変わりません。それでは7mm以上のひとみ径は不要でしょうか。スコープを覗いた時に、ひとみ径の7mmと瞳孔がズレた場合は、目に入る光量は減少します。ひとみ径が大きければ多少ズレても瞳孔に100%の光量が届きます。又、昼間には人の瞳孔は3mm位に絞られます。従って3mm以上のひとみ径であれば、昼間には明るさの差は感じません。

アイボックス: 接眼から覗いて全視界がはっきり見える位置をひとみ位置と言います。ひとみ位置は1点ではなく、前後に幅を持ちます。瞳位置の近地点と遠地点の距離とひとみ径で出来る円筒をアイボックスと言います。とっさに構えた時にアイボックスが大きいほど、正確に視界を捕らえることが出来ます。アイボックスが小さいスコープの場合には、目の位置が正確に定位置に無いと、正確に視界を捕らえることが出来ません。アイボックスが大きいスコープではパララックスに注意しなければなりません。アイボックスが大きいと、多少目の位置が上下左右にずれても、視界が正常に見える為にズレていると感じません。パララックスが正しく調整されていないと、目のズレによりレティクルに対して標的が動いてしまいます。正確な射撃を行うには、常に正確な位置でスコープを覗く必要があります。しかし、とっさに構えて射撃をするような機会が多い場合には、アイボックスが大きいスコープが有利でしょう。

レンズコーティング:コーティングによる透過率は下記のようになります。
            レンズ1面当たり透過率
コーティング無し     96%
単層コーティング     98.5%
多層膜コーティング    99.5%

コーティングの無いレンズは、レンズ1面で約4%の透過光の減少があります。1枚のレンズの両面で、(0.96)x(0.96)=0.92 透過光は92%になります。
例えば20面のレンズを持つスコープの場合、コーティングが無いと44.2%の透過率となります。単層コートの場合は、73.9%、多層膜コーティングの場合は90.5%になります。
メーカーにより、波長により透過率を変化させ、コントラストを付けたり、自然な色を表現させたり、一部の波長のみを透過させるなど、製品に特長を持たせています。

迷光(フレアー、ゴースト):対物レンズから入った光が無駄無く接眼レンズに到達するほど明るくなります。スコープの長い筒の中では、内面反射による迷光が発生し接眼レンズに到達します。この事により全体に白みを帯びた像となってしまいます。この為迷光を遮る絞りをいくつも設け、接眼レンズに到達することを防ぎます。迷光を抑えることによりクリアーな視界を得ることが出来ます。

メーカーが正直に申し上げる、各スコープの特徴比較表
 多かれ少なかれ、自分のニーズに合ったスコープを選ぶのは難しいと思います。更に、Marchスコープには非常に多くのモデルがあるため、適切なモデルを選択する際には混乱するかもしれません。ご存知かもしれませんが、Marchスコープだけでなく、世界中のすべてのスコープに長所と短所があります。貴方の希望条件に100%一致するスコープを見つけるのは非常に難しいと思います。しかし、希望条件に優先順位を付け、それに基づいて評価できるようにすることで、期待に近いスコープを選択することは可能だと思います。希望条件との不一致を避けるために、各スコープの特性を示す早見表を作成しました。これが貴方にぴったりのスコープを選ぶのに、役立つことを願っています。選択肢でお悩みの場合は、お気軽にお問い合わせください。同じメーカーのスコープを比較する場合、性能の違いを知るためのヒントをいくつか紹介します。(これらの一部は、通常のスコープとは異なる構造を持つGenesisモデルには適用されません。)

『エレベーション移動量』
一般的に(これはジェネシスモデルには適用されません)、スコープが短いほど、より多くのエレベーション移動量を確保できます。
 
『像の画質』
対物レンズが大きいほど解像力が増し、画質が向上します。 しかしながら表をご覧いただきお分かりの通り、48×52 SFP, 40-60×52 SFP, 10-60×52 SFPは、5-50×56 SFP と8-80×56 SFPよりも高画質となっています。確かに対物レンズの径が大きいほど、画質は向上しますが、レンズの質や、レンズコーティングなど、複数の要素が相まって、画質が決まります。

『レンズ素材』
レンズの材質も画質を決定する重要な要素です。

EDレンズ
マーチスコープは、ライフルスコープにED(超低分散)レンズを採用した最初のメーカーです。EDレンズは通常のレンズよりも少ない光を分散し、色収差を低減します。
色収差は通常、白い白鳥などの白い物体を見ているときに現れます。白い物体と背景の境界線に色のぼやけがあります。色収差を低減するため、24mm対物レンズ以外のすべてのスコープにEDレンズを採用しています。
24mm対物レンズのスコープは低倍率用です。低倍率では、色収差を見つけるのが難しくなります。24mm対物レンズスコープに関しては、EDレンズと通常レンズの色収差にほとんど違いはありません。

スーパーEDレンズ
私たちは、ハイマスターモデルのスコープにスーパーEDレンズを組み込んだ最初で唯一のメーカーです。スーパーEDレンズは、色収差補正に優れたEDレンズよりも、更にその特性が蛍石に近く、結果として端から端まで卓越した鮮明な画像を得ることができます。
全視界で、自然に出来るだけ近い色合いを実現しています。

温度ドリフト防止レンズシステム
自動車用カメラの最新の光学システムでは、厳しい環境変化に対する新しいレンズ材料が開発されました。
レンズの屈折率を変えることにより、環境温度の変化に対応します。
この新しいレンズ素材は、より安定したレンズシステムを作成するために、新しいハイマスターモデルの一部のマーチスコープに採用されています。温度変化に自然に適応し、幅広い条件で焦点と鮮明度を維持します。5-42x56FFP、4-40x52FFPジェネシス、6-60x56FFPジェネシス、10-60x56SFPには、温度ドリフト防止レンズが組み込まれています。

レンズコーティング
最近のほとんどの世の中に出回っているスコープは、マルチコーティングを使用していると謳っています。
コーティングの複数の層(3層の場合でも)はマルチコーティングと呼ばれます。ただし、完全にマルチコーティングされたレンズと記載していても、マルチコート色のようにしかコーティングされていない場合があります。この場合のマルチコーティング(緑がかった色)の透過率は、あなたが期待したものではないかもしれません。
レンズコーティングを見極める目を持っている必要があります。 複数層をコーティングすることで、反射を減らし、透過率を上げることができます。
一般的に、光の透過率は次のようになります。
 コートなしの1つのレンズ表面:96%
 コーティングの単層:98.5%
 完全マルチコーティング(3層以上)レンズ:99.5%
上記のように透過率99.5%のマルチコートを一般のスコープ(レンズの面20面)に使用すると、 99.5%の20乗で計算され、透過率は89.5%になります。 (0.995)x20乗 = 0.895%
Marchでは透過率が100%に非常に近い最高品質のマルチコーティングのみを使用しています。また、自然に近い色を出すよう努めています。

スコープの長さ
スコープが長いほど、光路の曲がりが少なくなり、収差が少なくなります。 最新の5-42x56FFPは5-40x56FFPスコープと比較して、エレベーション量がほぼ2倍になっています。5-40×56のエレベーション移動量は22MILですが、5-42×56のエレベーション移動量は40MILです。大きなエレベーション移動量を実現するために、5-42×56は5-40×56より29mm短くなっています。長さの短いスコープのIQ(画質)を強化するために、ハイマスターレンズシステムを5-42×56に組み込んでいます。
より大きなエレベーション移動量、ロック式ダイヤル、ワイドな見かけ視界を優先する場合 (5-42×56の26°見かけ視界は、5-40×56より30%広い)、5-42×56スコープをお勧めします。ワイドな見かけ視界は、狩猟などでより多くの視覚情報が必要な場合に機能します。 ただし、周辺部に収差が見られる場合がありますので、端から端までの鮮明さを好む場合は、5-40×56をお勧めします。
もしも貴方の最優先事項がIQ(Image quality:画質)であるならば、6-60x56FFPハイマスター・ジェネシスもしくは、4-40x52FFPハイマスター・ジェネシスをお勧めします。
ジェネシスのエレベーションダイヤルを回すと、スコープそのものが傾斜します。このユニークなデザインは、レンズの中心を常に見ることを可能にするので、ダイヤルの調整量に左右されることなく、最高の画質を得られます。
10-60×56ハイマスターはSFP(第二焦点面レティクル)での最高の画質を誇ります。スコープボディーが長く、ハイマスターレンズシステムを搭載しているためです。

『焦点深度』
焦点が合っている位置から距離を変えても、焦点が合う範囲を指し、焦点深度が深ければその範囲が大きくなります。一般的に、対物レンズが小さく、使用する倍率が低いほど、焦点深度は深くなります。
短時間で射撃距離が変わる狩猟などでは深い焦点深度が好まれますが、決まった距離で撃つ場合等は、焦点深度が深くあることの重要性は低くなるでしょう。
弱光下で射撃をする場合は、より多くの光を取り込み、より大きな解像力を持つ大きな対物レンズを備えたスコープを選択することをお勧めします。
ただし、焦点深度は、対物レンズが小さいスコープよりも浅くなるため、 焦点深度を増したい場合は、MDディスクを取り付けることをお勧めします。 MDディスクを対物レンズに取り付けることにより、焦点深度が最大50%(35mmMDdisk)、40%(43mmMDdisk)増加します。日中はMDディスクの有無による見えの違いにほとんど気付かないでしょう。
ただし、暗い場所で射撃する場合は、大きな対物レンズは、暗い環境でもより多くの光を取り込めるため、MDディスクを取り外すことをお勧めします。 日中だけ射撃する場合は、焦点深度が深く、対物レンズが小さいコンパクトなスコープが最適です。

『耐久性』
すべてのマーチスコープは、どんな厳しい条件にも耐えうるよう丈夫に作られています。
内部安定性のためにアルゴンガスで満たされ、完全に耐候性であり、少なくとも4メートルまで防水です。
また、最大1000Gの衝撃試験にも合格しています。
倍率や価格の異なるスコープ間で耐久性に違いはありません。すべて同じ純正日本製パーツを使用して、すべてのスコープを手作りしており、製造工程における違いもありません。
最高の耐久性をお求めの場合は、4㎜厚の壁を誇る34mmチューブスコープをお勧めします。すべてのスコープは同じ内部構造を持っています。30mmのチューブの壁の厚さは2mmですが、34mmのボディチューブのみ、純粋にスコープを更に強化するために4㎜厚となっております。ただし、軽量を優先する場合は、ボディチューブ径の小さいスコープをお勧めします。

下記、比較チャートをご参照下さい。



上記は、スコープを選択する際のいくつかの視点です。 自分にぴったりのスコープを選んで、素晴らしい射撃体験をしていただければ幸いです!

イルミ用の電池について
 

イルミ用の電池はボタン電池cr2032を使用します。電池を消耗すると電圧が下がり、スイッチモジュールのic駆動電圧が下がるため、プログラムが働かなくなります。 明るさの変更ができなくなったり、点き放しになるような場合は電池の交換時期です。=”” 製品に付いている電池はテスト用ですので早めに消耗することがあります。=”” 電池交換後、スイッチモジュールの取り付け時に締め付けが緩いとイルミスイッチが働かないことがあります。電池により微妙に厚さが違っていますので、シッカリと締め付けイルミが点灯することを確認してください。
イルミネーションスイッチ、種類別の明るさ
イルミネーションモジュールには3種類あります。標準4段階、低照度4段階、6段階イルミネーションモジュールの3種類です。

これらは全てのマーチスコープに適合します。 別の種類のイルミネーションモジュールを購入した場合でも、簡単に交換することができます。明るさはイルミネーションモジュールによって異なります。 相対的な明るさは以下のグラフのようになります。これは物理的なパルス値です。*人の目で見た時の明るさは、物理的なパルス値とは異なります。

標準の4段階イルミネーションモジュール :
明るさを変えるには、毎回ゴム製ボタンを押す必要があります。電源を切っても、以前の明るさは記憶されません。

低照度4段階イルミネーションモジュール:
ナイトビジョンを対物レンズ側に取り付けるなど射撃法によっては、標準の4段階イルミネーションモジュールでは明るすぎることがあります。
マーチでは低照度4段階モジュールをご用意しています。操作法は標準4段階モジュールと同じです。1時間経過すると、電池を節約するために自動的にイルミネーションが停止します。

6段階イルミネーションモジュール :
指先で回転させて明るさを変えます。ゴム製のボタンはオン/オフを切り替えるためだけのものです。前回使用した際の明るさを記憶しています。
これにより電源を入れた時に希望の設定になっています。
1時間経過すると、電池を節約するために自動的にイルミネーションが停止します。


マウントトラブル
 修理を依頼されるスコープの中で、マウントによりスコープを破損してしまったり、性能を落としてしまった事例が多くあります。 銃にスコープを取り付けるとき、通常はマウントベースを取り付け、これにスコープリングを取り付けてスコープを乗せます。しかし、すべての部品が公差ゼロで作られているわけではなく、前と後ろのマウントリングが必ず直線である保証はありません。10cmの間隔の2個のマウントリングに0.1mmの横方向のズレがあれば、100m先では10cmに相当します。そのためスコープリングの平行度に僅かにズレがあった場合にはスコープに曲げられる力がかかります。また、スコープリングはラップ分を見込んでやや小さめに出来ています。そのままリング締め付け、ボディにリングが食い込んだり、ボディを凹ましてしまった例があります。トラブルを防ぐためにはリングの締め付けトルクは適正トルクでなければなりません。(推奨:1.7Nm)。高精度のスコープは内部の可動部品のクリアランスを極限まで詰めているため、マウントリングはラッピングをしてスコープを取り付けることを推奨しております。

-スコープのW/E調整装置を大きく補正しなければならない場合-
ライフルスコープはスコープの光軸の中心から軸がズレるほど、スコープの解像度が悪くなります。出来るだけスコープの中心で使用できるように銃にセットする必要があります。
ロングレンジで使用する場合などは、傾斜マウントベースを使用する事をお勧めします。

マウントの取り付け方
 マウントリングは上下のセットを同時加工しています。このため、上下のセットはセットのまま使用してください。(前後のリングで上だけ入れ替えるようなことはしないでください)
マウントリングの4箇所のネジを取り付ける時は、一度に締め付けず、4箇所のネジを軽く取り付けた後、対角線方向にジグザグに締め付けて行きます。3回くらいに分けて均等に締め付けるようにしてください。最終的な締め付けトルクは下記Marchスコープリングスコープリング説明書を参照ください。
Marchスコープリング締め付けトルク説明書

ラッピングツールの貸出について
 銃は工業製品です。スコープリングも、スコープベースも、そしてスコープも工業製品です。工業製品には、製造公差というものが存在します。個々の部品製造において、この程度の寸法誤差は許容範囲ですよ、というものが製造公差です。これにより、個々の製品は品質を一定に保っています。単独の機械なら、その公差内であれば、問題は発生しません。ところがスコープを装着する場合、銃にマウントベースを取付け、そこにスコープリングを装着し、そこにスコープを締め付けて固定します。バラバラに作られた複数の工業製品が積み重なり、スコープを固定しているのです。単独の製品であれば、公差内に収まって問題を起こすことはありませんが、複数の製品が積み重なれば、製造公差が加算され、稀に許容範囲を超えてしまう可能性があるのです。



弊社にてMarchスコープ用にラッピングツールを作成いたしました。
銃砲店さんに貸し出し致しますので、銃砲店さんにご依頼ください。

ラッピング作業の必要性について
Gun Professionalsの松尾氏の記事を参照ください。

ラッピング作業マニュアル

ニュース・コラム